UP Forward

人事DXで大切なのは、システム導入より先に「業務を疑うこと」

2026.09.15

    人事DXで大切なのは、システム導入より先に「業務を疑うこと」

    • #

      組織開発

    • #

      スタートアップ企業

    「人事のDXをどのように進めたらいいですか?」とよく聞かれることがあります。

    DXというと、システムの導入やAIの活用など、さまざまな方法論が思い浮かぶかもしれません。私が一番大切だと考えているのは、「その業務をいかに手離れよく、誰でも使える状態にできるか」ということです。

    今回は、人事DXを進めるうえで大切にしている大元の考え方と、UP Forwardではどのように業務改善を進めているのかについてご紹介します。


    そもそも、人事DXとは何なのか

    人事DXと聞くと、評価システムや採用管理システムなど、「新しいツールを導入すること」をイメージする方も多いのではないでしょうか。最近ではAIを活用できるサービスも増え、「AIを使うこと」自体が目的になってしまうケースも見かけます。しかし、DXの目的は人事関連のシステムやAIを使うことではありません。
    本来の目的は、今ある業務を見直し、より楽に、速く、シンプルに進められる状態をつくること。そのための手段のひとつとして、システムやAIがあります。

    たとえば、人事領域でよくあるのが、「従業員データがExcelやスプレッドシートに散在している」という課題です。
    採用時の情報、従業員の基本情報、評価、異動などが別々のファイルで管理されていると、必要な情報を探すだけでも時間がかかります。「どれが最新のデータなのか分からない」「同じ情報を複数のファイルに入力している」といったことも起こります。

    こうした課題に対して、いきなり「人事システムを導入しよう」と考えるのではなく、まず第一に、今の業務そのものを整理する。私はこの順番がとても重要だと考えています。

    イーロン・マスクの「5ステップ」を実践

    私が前職時代に知り、業務改善を進める際に大切にしてきたのが、イーロン・マスクが提唱する「5ステップ」(「イーロン・マスクのアルゴリズム」とも呼ばれる)の考え方です。

    参考:Everyday Astronaut「Starbase Tour and Interview with Elon Musk」
    https://everydayastronaut.com/starbase-tour-and-interview-with-elon-musk/

    もともとはものづくりの現場で使われている考え方ですが、人事やコーポレート業務の改善にも置き換えることができます。

    ① 要件をすべて疑う

    その業務は必要なのかと疑ったことはありますか?

    今ある業務を前提に、業務改善をする上でどう効率化するかという各論から進むケースがあります。それは本質でしょうか。まず大切なのは、「なぜ必要なのか」「いつ必要なのか」「誰が必要としているのか」を整理することです。

    たとえば、従業員情報を複数のExcelに入力しているのであれば、「入力を効率化する方法」を考える前に、「そもそも、なぜ複数のファイルで管理しているのか」を考える。
    実は必要のない業務や、昔から続いているだけの作業を効率化しても、本質的な改善にはつながりません。まずは要件そのものを疑ってみてください。

    ② 人員や業務工程は、できる限り減らす

    次に、関係者や業務の工程をできる限り減らします。

    人事やコーポレート業務の上で、「この確認者は本当に必要なのか」「この人からこの人へのボールの受け渡しを減らせないか」「この転記作業はなくせないか」といったことを考え整理することが大切です。
    最初から工程を増やしすぎるのではなく、まずはできる限り減らす。減らしすぎて必要だと分かれば、後から付け足せばいいと考えています。

    いわば「最初からオールスター天丼にしない」ということです。

    そうやって、最低限必要なフローとドキュメントまで整理することで、業務の土台がシンプルになります。

    ③ シンプルに、最適化する

    残った業務をシンプルに、最適な形へ整えていきます。

    ここで重要なのは、必ず②の「減らす」を先に行うことです。不要なプロセスを一生懸命シンプルにしても意味がありません。
    ワークフローを書き出しながら、「どうすればもっと楽にできるか」「特定の人に依存していないか」「誰でもできる状態にできないか」を考えていきます。
    特に人事やコーポレート業務では、属人化をできる限り排除することが重要です。担当者が変わっても同じように業務を進められる状態をつくることで、組織としての強さにもつながっていきます。

    ④ サイクルタイムを短くする

    業務フローを整理したら、まずは実際にやってみます。

    やる前から構想だけに何ヶ月もかけることは勿体ないことです。まず動かしてみて、そこで出てきた改善点を洗い出していく。その方が、結果として改善のスピードは速くなります。「この業務は誰もができる」「この作業は自動化が難しい」といったことも、実際に運用してみるからこそ分かります。
    まず実行し、改善する。このサイクルを短く回していくことが大切です。

    ⑤ 最後に、自動化する

    そして最後に、業務を自動化します。

    ここで初めて、評価システムや採用管理システムなどのDXツールが選択肢に入ってきます。
    例えば、複数のExcelやスプレッドシートに散在している従業員データも、①〜④を通して必要な情報や業務フローを整理したうえで、一つのシステムに集約する。
    そうすることで、従業員データを一元管理し、必要な情報にすぐアクセスできる状態をつくることができます。
    一方、自動化が難しい業務であれば、誰でもできるようにマニュアルへ落とし込む方法もあります。
    大切なのは、DXだからシステムを入れるのではなく、業務全体を整理したうえで、本当に必要な部分を自動化することです。
    また、この仕事の進め方をチームで共通認識としてもつことが、良い成果物につながると考えています。

    まとめ

    1. 要件を疑う

    2. 工程を減らす

    3. シンプルに最適化する

    4. まず実行し、改善のサイクルを速く回す

    5. 最後に自動化する

    DXは、システムを導入することがゴールではありません。業務をシンプルにし、誰でも進められる状態をつくり、組織全体の仕事をより速く、強くしていく。そのための手段のひとつだと考えています。

    ぜひ、自社の人事業務を見直す際の参考にしてみてください。


    最後までお読みいただき、ありがとうございました。

    今回のコラムが、皆さまの人事DXを考えるきっかけになれば幸いです。次回もぜひご覧ください。

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